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その日の夜、私はサキの部屋に居た。
「ミキコ……仲良くなる前に帰っちゃったね」
「だね。でも、結構苦手なタイプだったから良かったかも。真面目な人間って一緒にいてもつまんないじゃん?」
サキはそう言って赤い髪を指でくるくる巻きながら微笑む。そして、「それよりさ、地下室気にならない?」と目を輝かせながら言ってきた。
「確かに日本ではあまり見ないから気にはなるけど……」
「カラオケルームとか無いかな?」
「流石にそれは無いんじゃない? あるとしたらワインセラーとか……オリバーさんの書庫とか」
「あぁ、そういえば今朝も地下室から出てきてたもんね、オリバーさん。勝手に入ったら怒られるかな?」
「怒られるに決まってるじゃん。留学生としてマナーはしっかりしないと、学校にも報告されちゃうよ」
「やっぱそうだよね」
そんな会話を最後に部屋を出た私は、用を足したくなったのでダイニングルームへ下りていく。
「おトイレ借りまーす」
小声でそう言ってトイレに向かい始めた時、地下室への階段の照明が点いているのが目に留まる。もしかしたらオリバーが地下にいるのかもしれないと、階段の上から声を掛けてみた。
「Rent a toilet《トイレ借ります》」
しかし、地下室から返事はない。防音設備があって聞こえないのかもしれないと思った私は、おやすみなさいの挨拶も兼ねて行ってみることにした。
サキに注意したばかりでこんなことをするなんて悪い女だと思ったが、挨拶だから仕方ないと自分を無理やり肯定する。
明日サキに地下室の中に何があったか話したら驚くだろうなと思いながら階段を下りてドアを開く。すると、思わず鼻と口を両手で覆ってしまうほどの血の臭いがした。
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