I wish I had been 5 minutes early

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 室内は暗闇に包まれ、中の様子を伺う事は出来ない。オリバーもメアリーも居ないのは明らかだ。階段の照明が点いていたのは単なる消し忘れか。  すぐに出ないといけないのは分かっているが、恐怖で足が竦み動けない。  私はポケットに入れていたスマートフォンのライトを点け、足下を照らす。木製の床には点々と血の跡がある。  頭の中で危険信号が点滅している。とりあえず地下室から出ようと階段を上り始めるが、血の臭いの正体が何なのか知りたくてライトで部屋全体を照らしてしまう。  そこには、先程まで人が寝かされていたのではないかと思う程に血で汚れたベッドがあった。少し視線を上げると、斧や巨大な肉切り包丁が壁に掛かっている。どれも使用して間もない雰囲気で血がべっとりと付いていた。  奥には巨大な冷蔵庫が設置されている。中に並べられているものが何なのか想像したせいで、吐き気がこみ上げてきた。  そんな想像をしてしまったものの、ここは羊や豚などの家畜を解体する場所なのかもしれないという希望もある。あの冷蔵庫も、オリバーが狩って来た獣を保管する為のもので、斧や包丁も切り分けに使ったから血が付いているだけだ。そう自分に言い聞かせながら、冷蔵庫を開いた。  しかしそこにあったのは、見覚えのある三編みをぶら下げた生首だった。太ももや腕も綺麗に切り分けられ、ラップで包まれている。  私はその場で尻もちをつき、失禁した。  ミキコは家に帰ったんじゃなかった。此処で殺されたんだ。そしてぶつ切りにされ、冷蔵庫で保管されている。数日分の食糧として。  冷蔵庫の隣にミンチ肉を作るミキサーが置かれていた。こちらも使用して間もないのか、肉片が散らばっている。ふと、今朝食べたミートパイを思い出す。嫌な想像を掻き消すように冷蔵庫を閉め、階段を駆け上がった。  此処に居たら、殺される。
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