保健室の悪魔

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保健室の悪魔

 私が通う学校の保健室には悪魔が出る。その悪魔は、保健室で仮眠を取っている生徒の夢の中に現れる。  悪魔と聞くと、目が鋭くて牙が生えていて、禍々しい羽が生えているように思うかもしれないが、その悪魔はいたって普通の女性だ。  髪が長く、薄い化粧のその女性は悪魔とは正反対の表情で微笑んでいる。  悪魔と呼ばれている所以は、夢の中で女性が自分の事を悪魔と自己紹介するからだ。  その自己紹介の後、生徒の身体に麻酔を打ち、腕や足をノコギリで切り刻んでいく。最終的にダルマのような状態にされる生徒。  麻酔が切れた時の激痛に合わせ、生徒は保健室のベッドで目を覚ます。  その噂をあまり信用していなかった私だったが、昨日体験してしまったのだから信用しない訳にもいかない。  たかが夢ではあるが、起きた時の身体のだるさと嘔吐しそうな不快感は最悪極まりない。  今日は全校集会。  朝から校長の話を長々と聞かないといけないので、一層身体はだるくなるだろう。  体育館で教壇に立つ校長。 「えー、本日より……保健室で勤務して頂く前川先生です」  そう言って紹介された女性が校長の隣に立った時、整列している生徒から悲鳴があがった。もちろん私も。  何故、悲鳴が上がったのか。  それは、その女性の顔が夢に出てきた悪魔そのものだったからだ。
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