友達かもしれません

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「何を興奮してんだよ。運命の出会いかもしれねーのに」  通話の終了したスマホに向かってそう呟いた俺は、久しぶりにフェイスブックを立ち上げる。  友達の数は120人。そのうちリアルでも友達と呼べるのは2人くらいだろう。ほとんどが友達の友達か、小学校や中学校の時に少し絡んだ程度の人間。  智樹の言っていた友達かもしれないリストを指でスクロールする。そこには共通の友達が1人という表示や2人という表示が顔写真と一緒に並んでいた。  中にはアフリカ国籍の黒人男性も居た。 「友達かもしれないって……な訳ねーだろうが」  そう言いながらその黒人の写真をクリックすると、俺の友達リストの中に居る小学校の同級生がその黒人と友達であることが判明する。 「へー、あいつボランティアでアフリカ行ってるんだ。根暗な性格だったのに、人は変わるもんだな」  再びスマホの画面を黒に戻してベッドの上に寝転がり、昨日届いたばかりの漫画を手に取る。  フェイスブックも仕組みはネットショップと同じだ。  カゴに入れた時に購入を増やす仕掛けがあるように、フェイスブックにも友達を増やす仕掛けが組み込まれている。実際に友達になるかどうかは置いといて、ほとんどの人間はコンピューターにまんまと動かされてしまっている。  漫画を読んでいる間に眠たくなってきた俺は、バイトが休みなのをいいことに二度寝に入っていった。
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