無人販売所

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無人販売所

 僕が住んでいる家の半径五キロ圏内には、スーパーマーケットはおろか、コンビニも無い。  父が脱サラして農家になってしまったのが原因ではあるが、都会暮らしに慣れてきた僕には最悪な環境だ。  卵は近所の養鶏場から貰い、肉や魚は週に一度やってくる移動販売車から購入している。そして野菜は、家から徒歩数分にある無人販売所を利用している。  誰が管理をしているのかは知らないが、野菜が並ぶ台の隣に錆びた缶があり、【野菜一つにつき百円入れてください】と汚い文字で書かれているそうだ。  今日の夕食は鍋。その鍋に入れたい野菜を、無人販売所で買ってくるよう母に頼まれた僕は、百円玉を四枚握って家を出た。  通行人など居ない田園風景を歩く事数分、無人販売所の前に辿り着く。台の上には白菜と水菜が置かれていた。その隣に見たことのない野菜が二つ並んでいる。  手に取って凝視するが、その野菜の名前すら分からない。葉には棘がついており、血のように赤い実の部分がフジツボのようになっていてかなりグロテスクだ。  僕は母を驚かせてやろうとその野菜を手に取り、お金を缶の中に入れた。
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