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「かーちゃんっ」
土曜日の昼下がり。
今日も息抜きがてらの在宅の副業を切り上げて、オレンジ色の瓦屋根が可愛い、丘の上の託児所にやんちゃ坊主を迎えに行く。
6月の日差しは梅雨の合間とも思えないほどカンカンに強くて、眩しい。
保育園みたいな三つあるお部屋の真ん中から走り出て来た可愛いやんちゃ坊主は、お着替えも全部なくなってしまったのか、「おひさま」と託児所の名前の書かれたパンツとランニングを着ていた。
「タカ――うぐっ」
四歳児の力とは言え、男の子の勢いでお腹に思いっきり頭突きをされて、わたしは思わず本気で呻く。
これ、お腹に下の子が入ってるお母さんとかだったら、かなり心配なレベルの衝撃だと思う。
「見て、見て! これ今日の泥だんご!」
子どもたちの間で年にいっぺんは流行する、泥だんごをつるつるのキラキラに光らせるという例のアレだ。
高志の手のなかのそれは、まだキラキラにはほど遠い。でもまあ、だいたい真ん丸で、あぁ高志のちっちゃい手も随分器用になってきたんだなぁと感慨深い。
「うん。上手に出来たね」
「めっちゃ真ん丸! 宇宙だろ!」
宇宙……?
宇宙は、むしろお前だ。
言わないけど、心のなかで考えながら、わたしは遠い目になる。
男の子が苦手なわたし、田中香新(キラキラネーム恥ずい)ですが、さすがに四年間ずっと一緒に暮して来た高志だけはなんとか、慣れることができているのです。
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