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「かーちゃん、なにつったってんの? ほら、たんざくかいてけって。おれはねー、バイクレンジャーになるでしょ、ゆうえんちにいきたいでしょ、あとカレーたべたいでしょ。かーちゃんがおんせんいきたいっていってたからつきやってやってもいいでしょ」
「ふふっ、付き合ってやってもいいって」
高志には慣れたと言っても、こどもの苦手なわたしは、意識していないとこどもの話すとりとめのない話に優しい相槌を打つことが出来ない。耳を素通りしてしまう。
でも、今はやまちゃんがそのへんでにこにこ高志を見てるから、わたしも勝手に満面の笑みになっちゃっている。
なんて悪いかーちゃんだろう、ごめんね高志。下心いっぱいで。
明日の日曜日はちゃんと公園付き合うからね(雨が降らなかったら)。
短冊は折り紙で出来てるのが普通だと思っていたら、絵の具でピンクや黄緑のきれいなまだらに染めた紙を渡された。先週、こどもたちが染めたものを先生たちが切って用意してくれたのだとか。
むむ……そしたら、ここで書き損じたりするわけにはいかないね?
「かーちゃんはねがいごとなに? はやくかけよー、おれ、『た』と『し』ならかけるからかいてやるよ」
「うーん。じゃあ、『た』か『し』がでてきたらお願いしようかな」
「た、かし?」
「ウン」
「たかし?」
「ウン」
「それっておれじゃーん。イエッ」
喜んで(?)ジャンプを始めた宇宙人を一旦放置して、わたしは綺麗な短冊を前に真剣に悩む。
いちばんの願い事は、正直に申告するならば「やまちゃんと仲良くなれますように」。
でもさすがにここでそれは書けない。
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