86人が本棚に入れています
本棚に追加
余裕のないかーちゃんでゴメンね……。
そしてわたしもここで育ちたかったよ……。
「じゃ、私はこれやってますから、適当にそのへんの制作物見てって下さい」
子どもたちの制作物よりも作業するやまちゃんを見てたいなと思いつつ、さっさと帰らないと迷惑だろうと、慌てて彼に「帰りますから」と告げた。
するとやまちゃんは「タカシ、重いよ。それに、車で寝かすと暑いかも。時間あるなら、コーヒーでも飲んでますか」と普通に言うではないですか。
「えっ……お邪魔では?」
わたしたちが帰らないと、やまちゃんも帰れないのでは……。
そう思いつつ、ちょっと期待してしまうわたし。
本心を言えば、見ていていいと言うなら、ずっとやまちゃんを見ていたいくらい。
コーヒーなんてもちろんおいしいだろうし、インスタントでも冷めていても全然かまわないし、むしろ白飯でも、お酒でも、やまちゃんの作業姿でぐいぐいいけちゃうと思う。
やまちゃんは、ふつうに「いいですよ」と言って子ども用の背の低いテーブルに焼き物のカップにコーヒーを淹れて置いてくれた。
残念、目は一瞬しか合わない。彼の表情は変わらない。
少しだけ仲良くできた、かも。
いや、わたしじゃなくて高志に関する話題で会話が成立しただけか。
うむむ。もっと仲良くなりたいなあ。
子ども用の小さい小さい椅子に座って、わたしはそんなことをぼーっと考えていた。
コーヒーは熱くて、おいしかった。
ブイイイイイイイ、と高いような低いような唸り声を、やまちゃんの手元の電動工具が上げている。
最初のコメントを投稿しよう!