僕は独りで夜を越える

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 北門を出ると、そこには田んぼ、田んぼ、田んぼといった感じだ。夏のある日のように緑が戦ぐ爽やかさはないが、短く刈られた茶色の上を北風が吹き荒ぶ様も悪くない。冬を乗り越えるべく明らかにふくよかさを増したスズメ達が一所懸命地面にお零れを探すのが哀れに感じられた。かかしが纏った布を日々ボロくしていくのも……。早く片付けてやれよと思いながら、僕は来住公園の角を曲がった。  1人で帰ることは、物思いに耽ることと同義だと思う。  少なくとも、今日の僕はそうだった。  「細川、泣いてたな」  
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