僕は独りで夜を越える

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 来住公園を越えると、小野川の流れにぶつかる。  向こう岸の小学生達が戯れあいながら遠ざかっていくのを少し待って、一段車道から高くなっている所へ上がった。犬の糞を踏まないように気をつけながら、両腕を水平に伸ばしてバランスを保ちつつ、平均台の要領で前へ進む。  ちょぽんと鯉の口先が川面を突き上げた。わかりきっているのに、反射的に川を覗き込む。前のめりになると、近隣の民家に積み上げられた柑橘類の腐臭が風に乗ってやってきて思わず顔を顰めた。野良犬も驚いて、宙に向かってワンワン吠えていた。  臭いから少しでも離れようと、川に沿って歩を進めた。  落合橋の手すりを爪先で掻いてみる。雨で濡れて乾いてを繰り返して、所々白くなっているのを何度も。  小学校の時は学校から持ち出したチョークを使って、様々な駄絵を殴り描いたものだった。
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