僕は独りで夜を越える

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 「ただいま」  リビングのテーブルには、僕の分の煮物だけがラップをかけられて置かれていた。駐車場にすでに車はあったし、父も仕事から帰っているのだろう。いくらまっすぐ帰るのが億劫だったとはいえ、少々寄り道をしすぎたようだ。  父と母は、恐らくまた夫婦の部屋。  「子どもは入っちゃいけないのよ?」なんて、昔から耳にたこができるほど聞かされてきたものだから、生まれてこのかた「入ってみよう」なんて考えたこともなかった。  でも、今日の僕は違う。
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