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「そういえば、こんなアプリがあるんだけど、森夜さんは知ってる?」
歩きながら、小田桐先輩がスマホの画面を見せてきた。おお、本物のスマホだ。
そこには丸っこくてカラフルなフォントで
「たんかぶっ!」
という表示が。おそらく「短歌部っ!」と言いたいんだろう。
「誰でも気軽に短歌を投稿できるアプリなんだ。自分の投稿した短歌に対して、他の利用者から『いいね』ボタンで評価を貰えたりもするんだよ。もちろん他の人の短歌を評価することもできる」
「へえ、そんなハイテクなアプリがあるんですねえ。知りませんでした」
「無料だし、よかったら森夜さんもインストールしてみない? 僕も日比木も利用してるんだ。思いついた事をメモするのにも便利だし。あ、そうだ。ついでにラインも交換しない? 気軽に短歌についての意見を出し合えるだろうし。もちろん短歌のことだけじゃなくて、雑談でもなんでもいいけど」
小田桐先輩の誘いは嬉しかった。色々と気にかけてくれるその様子に親しみを感じたのだ。そう、まるで友達みたいな。
けれど、私にはそれができない理由があった。
俯きながら、消え入りそうな声で答える。
「……すみません。それはちょっと……」
それを聞いて小田桐先輩は気まずそうに目を逸らしながら頭をかいた。
「あー……まあ、知り合って間もない男子とのライン交換なんて抵抗あるよね。得体の知れないアプリを入れるのも。ごめん。気軽に誘ったりして」
「ち、違うんです。そうじゃなくて……私の携帯がその……これでして……」
鞄からおずおずと携帯を取り出して見せる。二つ折りになっているタイプの、いわゆるガラケーというやつだ。
とたんに、日比木先輩が噴き出した。
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