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「うわ、ガラケー⁉ マジかよ。今時そんな骨董品なんか使ってる女子高生がいるんだな。しかもそれ、お年寄りにも優しいっていう、文字がでかく表示されるやつじゃん? うちの七十になる婆さんがそれと同じの使ってるぜ。うける」
先ほどまでの不機嫌さが消え失せたかのように、日比木先輩はこちらを指差しながら遠慮もなく笑っている。ひどい。
ガラケーが現役女子高生にそぐわない前時代的な代物だってことくらい、私だってわかっている。だからこそ、そうやってからかわれたりすると少しばかり傷ついたりもするのだ。
「し、仕方ないじゃないですか。これは我が家の方針なんです。携帯なんて緊急事以外に使うことなんてないんだから、余計な機能は必要ないっていう……」
必死に説明すると、隣の小田桐先輩が自身の顎のあたりに手を添える。
「家庭の事情なら仕方ないか。ガラケーじゃラインもできないしね……でも、残念だなあ」
その心底がっかりしたような口調に、私は反射的にガラケーの画面をかざす。
「あ、で、でもラインは無理でも、普通にメアドなら交換できますよ!」
「え、いいの?」
「もちろんです!」
二人の先輩は何故か妙な表情でお互いの顔を見合わせていたが、やがて
「ガラケーとスマホってどうやってアドレス交換するんだ? まさか直接入力なんてめんどくせえ方法じゃないよな……?」
「ええと、さすがにQRコードとかあるんじゃないか……?」
だとか小声で話し始めた。
そして無事にアドレス交換が終わり、私の携帯のアドレス帳に二人の名前が新たに加わった。一気に二人もだ。すごい。奇跡だ。奇跡みたいなミラクルだ。
携帯の画面を何度も見返して、それが現実であることを確かめる。そしてしみじみと思った。
ああ、やっぱり今日はいい日だ。
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