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「なんだよこの短歌は。森夜、お前ふざけてんのか?」
退屈な授業を終え、放課後を迎えた私は、早速部室で短歌作りに励んでいた。
ところが、あれやこれやと考えながら、やっとの思いで作った短歌を見せるなり、日比木先輩が昨日の気だるげな態度とは打って変わって、積極的にそれを貶し始めたのだ。
その問題の短歌がこれだ。
【じょしりょくの ・*:.。
ぁぴ→るのため☆
たんざくを 。*・゜
デコってみたょ゜☆*
てへぺろりんこ(*≧∀≦*)】
「だ、だって、昨日は妄想でも嘘でもなんでもいいって言ってたじゃないですか。自由に書いていいって」
「だからって顔文字や妙な模様なんて入れるか? 信じらんねえ」
「このほうがかわいいと思いませんか? あ、ちなみに『ぁぴーる』のところの『ー』が『→』になっているところがポイントです。更に全部ひらがなにしたり、一部小文字にする事によって今時の女子感を表してみました」
私の解説に、日比木先輩は頭をかきむしる。
「はあ、理解できねえ。昨日もアホみたいな短歌作りやがって」
「えっ? あ、アホみたいって……? あの時は褒めてくれたじゃないですか」
「俺は別に褒めてねえよ。確かに『いいんじゃねえの?』とは言ったけど、あれは『"どうでも"いいんじゃねえの?』って意味。それに部員獲得のために、余計なこと喋るなって小田桐が言うから」
ひ、ひどい……! この人があの短歌に対してそんなふうに思ってたなんて……私なりに一生懸命考えたのに……!
しかも今の話ぶりからすると、小田桐先輩も私の「アホっぽい短歌」を過剰に褒めてたみたいだ。どうりでやけに賞賛されると思っていた。自分に才能があるのかと勘違いしてしまうほどに。昨日の先輩達の不自然な賞賛は部員獲得のためだったのか!
小田桐先輩を見やるも、彼はまるで話を聞いていないかのように何やら作業中で、私の抗議の視線もスルーしていた。
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