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「そいつ、部屋を間違えたんだってよ」
口ごもる私の代わりに金髪男子が答えてくれたが、眼鏡男子は首を傾げる。
「それは妙だな」
「え? な、何がでしょう」
「入学したばかりならともかく、化学室なんてそれこそ授業で毎回使うのに今更間違えたりする? それに隣は物置同然の化学準備室で、施錠されてて中に入れないのは周知の事実。だからそっちに用があったとも考えられない。おまけにこの化学室は廊下の端に位置していて、これより先に部屋は無い。つまり別の部屋と間違えるなんて事は常識的に考えて難しい」
な、なにこの人……
まるで私が最初から化学室に用事があった事を見抜いているみたいな……
返す言葉を探す私に対し、たたみかけるように眼鏡男子は続ける。
「もしかして、君は短歌部の入部希望、もしくは見学希望者なんじゃないかな? それでこの化学室を訪れた」
「は? それじゃあなんでそいつは『部屋を間違えた』なんて言ったんだよ」
金髪男子の疑問の声に、眼鏡男子は苦笑を浮べる。
「そりゃお前のせいだよ、日比木。こんなガラの悪い男子がひとりで部屋にいたら逃げたくもなるだろ。女子ならなおさら。
だから部活を見学したいとも言えずに咄嗟に『部屋を間違えた』なんて言ったんじゃないか?」
「なに? そんな目で俺の事見てたのか? 失礼な奴だな」
バ、バレてる……!
なんなのこの眼鏡の人。妖怪サトリか何か?
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