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「さてと。まずはありきたりだけど自己紹介からかな」
向かい側に座った眼鏡男子が口火を切る。
「僕は小田桐恭介。二年生だ。一応この短歌部の部長をしてる。それで、こっちの凶悪そうな金髪が副部長の――」
「凶悪そうで悪かったな。俺は日比木伊織。この眼鏡野郎と同じ二年だ」
金髪男子は隣の眼鏡男子の言葉を引き継ぐ。不機嫌そうに頬杖をつきながら、こちらに目もくれずにそっぽを向いて。
なるほど。優しそうな眼鏡男子が小田桐先輩で、怖そうな金髪男子が日比木先輩か。よし覚えた。と思う。
「それで、君は――?」
小田桐先輩の促すような言葉に、私はまだ自分の名を名乗っていない事を思い出した。
「わ、私は森夜月湖。一年です。あ、月湖の『こ』は子どもの『こ』じゃなくて、湖の『こ』です」
「へえ、なんだか神秘的でかわいい名前だね」
小田桐先輩が褒めてくれた。照れるけどうれしい。学校で誰かとこんなに和やかに話したのも随分と久しぶりだ。そのせいか、私の気分も口も軽くなる。
「私、掲示板に貼られてたポスターを見たんです。どっちの短歌も面白かったです。勉強中にマンガを読んじゃうっていう短歌のほうはすごく共感できたし、もうひとつの変温動物のほうは、こんな事実際に言われてみたいなーなんて思ったりして、ちょっとときめきました」
そう伝えると、二人の先輩は顔を見合わせた。
な、なんだろう。変なこと言ったかな。
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