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小田桐先輩もああ言ってくれている事だし、せっかくだから思った事を書いてみようかな。
しばし考えながら、私は思いついた言葉を、短歌の体裁になるように短冊へと落とし込んでいった。
【甘いもの 食べた後には塩辛いものを食べたい無限のループ】
「ええと、あの、甘いものを食べた後には塩辛いものが食べたくなって、でもその後はまた甘いものが食べたくなるっていう現象を表現してみたんですけど……」
「日常生活の中で感じた事を表現したわけか。うん。面白いよ、この短歌。なあ、日比木もそう思うだろ?」
小田桐先輩に肘で突かれ、日比木先輩がめんどくさそうに口を開く。
「あー……うん、いいんじゃねえの?」
「ほ、ほんとですか⁉」
褒められた!
もしかして、短歌って思ってたより難しくないのかな?
「森夜さんには短歌作りのセンスがあるかもしれないな。こんな素晴らしい短歌見た事ないよ。その才能を埋もれさせるのは実に惜しい。是非とも僕らと一緒に短歌作りの技術を磨いて行こうよ」
そ、そんなに……?
私って、実は隠れた才能があったのかな? もしかして、もしかして、ここが私の本当の……
「ほら、ここに入部届けがあるから、必要事項を記入して」
我に帰った私は小田桐先輩に促されるまま入部届の空欄を埋めて行く。
その途中で大事な事を思い出した。
「あ、あの、私、家庭の事情で五時半頃までしか活動できないんですが……」
「ああ、そんなの全然気にしないで。僕も塾のある日は早く帰るしね。四時から始めたとしても一時間半も活動できれば十分だよ」
小田桐先輩のその言葉に、私は安心して記入済みの入部届けを提出した。
が、その時はまったく気づかなかったのだ。彼らの思惑に。
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