リア充の定義はわからないけれど今がしあわせなのは確実

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リア充の定義はわからないけれど今がしあわせなのは確実

 鏡台の前に座ってヘアアイロンで髪を緩く巻いてゆく。  自分で言うのもなんだが、最近は結構上達したような気がする。整髪剤をつけた指先で毛先を軽く整えてから、最後にカチューシャをセットすれば完成だ。  爪も完璧。両手には控えめなベージュのマニキュアが光る。  今までは、こんな生活が訪れるなんて考えられなかった。  感慨深く爪の先を眺めていると、階下からの 「月湖ー、もう来てくれてるわよー! 早くしなさーい!」  という母の声に我に返り、慌てて厚手のコートを羽織ると部屋から飛び出して、階段を駆け下りる。  途中で 「おねーちゃん、後でネイルアートしてー。明日友達と初詣に行く予定なのー」  という星実の声に 「いいよー。どんな絵柄がいいか考えといてねー」  と返しながらブーツをはく。 「月湖、くれぐれも門限までには帰ってくるんだぞ」 「わかってるって。今まで私がその決まりを破った事はなかったでしょ?」  お父さんに答えながら急いでドアを開けると、門柱のところに日比木先輩が立っていた。 「よう。あけましておめでと」

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