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王子・サン
母の葬儀が終わった。王族の儀式に似つかわしくなく、質素なものだった。
雨季を迎えた大地には、緑の若草が顔を覗かせている。やわらかな風が、サンの美しい金髪をなびかせていく。
果てなく広がる紺碧の空を仰ぎながら、サンは、母・マリの最期の言葉を想い起こしていた。
―― ジョージさんはね、あなたの実の父親ではないの。本当のお父さんは……ジョージさんに殺されたのよ。
母が遺した言葉の真偽を、サンは測りかねていた。
死の間際にあって、態々こんな大それた作り話をするとは思えない。だが、これまで父として慕い 国の王としても敬ってきたジョージが、実は憎むべき父の敵であったとは、俄かには信じられなかった。
仮に真実であったとして―― 母は何故、そのような相手に添い遂げる道を選んだのであろう。まるで深い霧に包まれたかのように、この疑問はサンの心に燻り続けていた。
やがて彼は、それら全てが紛れもない事実であったと知ることになる。
王であるジョージは、マリの他にも複数の妻を囲っていた。サンにとっては義母に当たる ひとり、ナオミから詳しい経緯を聞かされたのが始まりだった。
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