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トゥルルルル…………。
眠りの浅瀬を漂っていた彼はその音に呼び覚まされた。眠りの海から現実の世界へと意識が引き戻される。だが、それとは裏腹に金の髪は更にシーツの中へと潜り込む。
トゥルルルル…………。
今や電話の着信音など様々なジャンルの音楽が選びたい放題にも関わらず、昔ながらのレトロな音が早く出てくれとばかりに喚いている。
その一方で、今朝眠りについたばかりの彼は無視を決め込んでいるようで、なかなか起き上がろうとしない。
トゥルルルル…………。
電話の向こうの相手も諦めが悪いのか、なかなか鳴り止まない。
彼はシーツの間から筋肉の程よくついた滑らかな腕を伸ばし、頭上にある時計を掴んで目の前へ引き寄せた。
午前十時二十八分。彼が起きるにはまだ早い時間帯。
現時刻を確認すると、彼は時計を元の位置に戻し、再びシーツを被って眠りに就こうとした。
トゥルルルル……。
それでも電話はしつこいくらい鳴き喚いている。
トゥルルルル……、トゥルルルル……。
あまりにも激しいラブコールに、彼はついに観念した様子で被っていたシーツを引き剥がし、半身を起こした。
白日の下、筋肉のバランスが見事に取れた上半身が晒し出される。肩、腕、背中、胸、腹。太すぎず、細すぎず、引き締まった筋肉が全体的に付いていて滑らかなラインを形成している。その体型は遺伝によるものなのか、本人は特に意識していないようだが。
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