ヒーローにはなりたくない。

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 でも巧は、いつも人から「立派な人」だと思われていないといけないのは、苦しそうだと思う。  それに、人の命を助けるなんて、巧にはできそうもないし、やりたくもない。  もし助けられなかったら、こわいからだ。  自分に背負いきれないものを背負わされるようで、今の巧には、お医者さんになるなんて、不安しかない。  だから、「なぜお医者さんにならないの」なんて聞かれるのは大嫌いだ。  おじいちゃんも、たすくさんも、ヒーローみたいだ。  そんなのは、すごすぎて真似できそうにない。  巧は、将来ご近所からヒーロー扱いされないためには、どうしたらいいのか考えた。  そして、「かいじん(怪人)に なる」と書いて、短冊を笹にくくりつけた。  それとも、いつか巧も、お父さんみたいになる日がくるのだろうか。    巧は、もう一枚、短冊を書いた。 「たすくさんが もっといっぱい ねられますように」と。  おばあちゃんが、それを恥ずかしいと思わないといいな、と思いながら。
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