片思い

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片思い

僕は今オンラインゲームにハマっている。「神狩り」というスマホで出来るRPG。神様を復活させようとする奴らと戦っていく異世界ファンタジー。神様を狩るってって思うとは?ってなりそうだけど、神と人間との戦いって感じかな。 今までもいろいろゲームをやったことがあるけれど、どれも長続きしなかった。でも、これだけは楽しくて続いている。それもこのゲーム内で知り合ったフレンドのおかげでもある。彼がいたから半年も続けてこれた。今まで3日と持たなかったのに。 だから急に彼がログインしなくなった時は不安になった。彼以外と親しくしているフレンドなんていないから、何をしていいかわからなくなったんだ。1週間ほどしてから彼が久しぶりにログインしてきた時はとても嬉しかった。 「久しぶり。ごめん。仕事が忙しくてなかなかインできないんだ。当分INできないと思う」 彼から個チャでそう言われた時は天国から地獄に落とされたかのようで悲しくなった。 「そうなんだね。わかった。また一緒に遊べるのを楽しみにして待ってるよ」 僕はそう返事をするのが精一杯だった。 「おう。じゃあ仕事に戻るよ。またな」 彼との会話はそれだけで終わった。一緒に行って欲しいダンジョンがあったのにと思うものの、彼は直ぐにログアウトしてしまったからそれもまたお預けとなった。 それから毎日、僕は彼がログインしてくるのを待ち続けた。1週間、2週間と過ぎ、1ヶ月経った。彼と遊びたくて、彼がいつログインしてもいいようにログインだけはし続けた。 そして風の便りというか、世界チャットで彼が引退したという話を聞いた。僕は悲しかった。彼が引退したことを知らずに、彼がログインするのをひたすら待ち続けたことに情けなくなった。彼とは誰よりも親しいと思っていたから。嘘をつかれたようで悔しくて泣いた。彼がもうログインしないとわかると、急にゲームがつまらなくなり、それ以来僕はこのゲームをすることはなくなった。 そう、僕はこのゲームを通していつの間にか彼に恋をし、彼とデートしている気分だったのだ。会ったこともない、名前すら知らない彼に恋をし、毎日会えることを楽しみにしていたから、どのゲームよりも長続きしてたのだ。純粋な乙女のように。 そして今、どこかでまたかれとあえるんじゃないかと彼を探して手当たり次第にゲームをしている。いまだ彼を見つけきれないけれど、いつかまた会えると信じて。
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