転入生・木村容子

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彼女に、誰もが目を奪われた。教室をゆっくりと見回し、彼女は低く、よく通る声で言った。 「木村容子といいます。大阪から来ました。よろしくお願いします」 席を指示されると、木村容子はすたすたと歩き、一番後ろの窓側のその席に着いた。 抜けるような白い肌。切れ長の瞳。黒く長い髪、長い脚。 授業を受けながら、男子生徒はみな、ちらちらと木村容子を盗み見した。 岡本里実は木村容子の斜め前の席だった。昼休みになり、木村容子は本と弁当箱を出して、本を読みながら黙々と食べだした。里実は、クッキーの袋を持って、木村容子の席の前に立った。木村容子の読んでいる本には里実の知らない外国語がびっしり並んでいた。 「あ、あの、木村さん。おひとつ、どうぞ」
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