9人が本棚に入れています
本棚に追加
鏡を見るたび私の気分は不快になる。なんで口元にニキビが出来てしまうのか、全くわけがわからなかった。
肌の管理を怠っているわけではないのに、どうしてニキビが出来てしまうのだろうか。もしかすると遺伝的なものかもしれないと、女子トイレにある洗面台の縁に手を置きため息をつく。
教室内に入ると親友の香子が話しかけてきた。
「どうしたの彩芽。なんか顔色悪そうだけど」
私の顔色が悪いのを察知して心配したのか、香子が顔を近づけてきて具合を聞いてきた。
「いや、体調とかは悪くないんだけどさ。ちょっと、口元に大きめのニキビが出来てショックなんだよね」
「そうだったんだ。確かにニキビができるのはちょっと嫌だよね。私も昔にニキビ結構できてさ、どうすればいいか考えたことあるんだよね。そしたら、私の場合は睡眠不足が原因だった」
睡眠不足ではないかと香子に指摘される。私は睡眠を多く取る方ではないが、睡眠の時間が減ってきてるわけではないので、これには当てはまらないなと感じた。
「珍しいな、いつも能天気なやつが暗い顔してるなんて。馬鹿は悩まないんじゃないのか?」
左後ろに顔を曲げると春翔が小馬鹿にするように頬杖をついて笑っている。
春翔とは小学生の頃からの付き合いになる。所謂、幼馴染というやつだ。
「うっさい、春翔。私だって落ち込むことくらいあるわよ、人間なんだから。あと、私が馬鹿なら春翔は大馬鹿だからね」
私は春翔に対して人差し指を向けて刺すような視線を放つ。春翔は「おー、怖い怖い」と言い、戯けるように肩を竦める。私の顔色を伺うことなく平然と春翔は話を続ける。
「でもさー、彩芽。前のテストの点数、俺の方が高かったよな。てっことはさ、大馬鹿は彩芽の方になるんじゃないか」
春翔は私に対して皮肉を言ってくる。私としても事実を言われてしまい、苦し紛れの抵抗になってしまう。
「そう言うこと言ってんじゃないの、ばーか」
「馬鹿に馬鹿って言われてもなー」
互いにヒートアップしてきて口汚い言葉が飛び交うようになる。私達の口論を間で聞いていた香子は、苦笑いを浮かべながら「まぁまぁ、二人とも落ち着いて」と言って仲裁に入ってくれる。
香子としても私達の口論は見慣れたものなのだろう。最初の頃は驚く様子を見せていたが、最近に至っては反応することも少なく感じる。
私と春翔も別に犬猿の仲というわけではない。言い争いになるのがしょっちゅうなので、周りからはそう思われがちなだけだ。大概、口論になるのは春翔がからかってくるからなので私は悪くない。春翔が悪い。
休み時間の終わりを告げるチャイムが鳴り、生徒達が自分の席に戻っていく。私達の口論もチャイムの音を境に収まったのだった。
最初のコメントを投稿しよう!