私と彼とニキビと妹

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 鏡を見るたび私の気分は不快になる。なんで口元にニキビが出来てしまうのか、全くわけがわからなかった。  肌の管理を怠っているわけではないのに、どうしてニキビが出来てしまうのだろうか。もしかすると遺伝的なものかもしれないと、女子トイレにある洗面台の縁に手を置きため息をつく。  教室内に入ると親友の香子(きょうこ)が話しかけてきた。 「どうしたの彩芽(あやめ)。なんか顔色悪そうだけど」  私の顔色が悪いのを察知して心配したのか、香子が顔を近づけてきて具合を聞いてきた。 「いや、体調とかは悪くないんだけどさ。ちょっと、口元に大きめのニキビが出来てショックなんだよね」 「そうだったんだ。確かにニキビができるのはちょっと嫌だよね。私も昔にニキビ結構できてさ、どうすればいいか考えたことあるんだよね。そしたら、私の場合は睡眠不足が原因だった」  睡眠不足ではないかと香子に指摘される。私は睡眠を多く取る方ではないが、睡眠の時間が減ってきてるわけではないので、これには当てはまらないなと感じた。 「珍しいな、いつも能天気なやつが暗い顔してるなんて。馬鹿は悩まないんじゃないのか?」  左後ろに顔を曲げると春翔(はると)が小馬鹿にするように頬杖をついて笑っている。  春翔とは小学生の頃からの付き合いになる。所謂(いわゆる)、幼馴染というやつだ。 「うっさい、春翔。私だって落ち込むことくらいあるわよ、人間なんだから。あと、私が馬鹿なら春翔は大馬鹿だからね」  私は春翔に対して人差し指を向けて刺すような視線を放つ。春翔は「おー、怖い怖い」と言い、戯けるように肩を(すく)める。私の顔色を伺うことなく平然と春翔は話を続ける。 「でもさー、彩芽。前のテストの点数、俺の方が高かったよな。てっことはさ、大馬鹿は彩芽の方になるんじゃないか」  春翔は私に対して皮肉を言ってくる。私としても事実を言われてしまい、苦し紛れの抵抗になってしまう。 「そう言うこと言ってんじゃないの、ばーか」 「馬鹿に馬鹿って言われてもなー」  互いにヒートアップしてきて口汚い言葉が飛び交うようになる。私達の口論を間で聞いていた香子は、苦笑いを浮かべながら「まぁまぁ、二人とも落ち着いて」と言って仲裁に入ってくれる。  香子としても私達の口論は見慣れたものなのだろう。最初の頃は驚く様子を見せていたが、最近に至っては反応することも少なく感じる。  私と春翔も別に犬猿の仲というわけではない。言い争いになるのがしょっちゅうなので、周りからはそう思われがちなだけだ。大概、口論になるのは春翔がからかってくるからなので私は悪くない。春翔が悪い。  休み時間の終わりを告げるチャイムが鳴り、生徒達が自分の席に戻っていく。私達の口論もチャイムの音を境に収まったのだった。  
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