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翌日、鏡を見ると若干の変化に気づいた。あれと思ってよく見ると、ニキビの大きさが小さくなっていることに気づく。もしかして効いてる。本当に良いものを明音は勧めてくれたのかもしれない。とりあえず使い続けてみよう。
それから一週間が経つと、あれだけ目立っていたニキビが嘘のように跡形もなく消えていた。鏡の前に立ち何度も顔を見る。ニキビのない自分の顔を見てテンションが上がっていた。ようやく悩みから解放されて清々しい気分になる。
教室内に入ると香子と挨拶を交わす。香子は私の顔の変化に対して驚くような表情をした。
「彩芽、最近肌めっちゃ綺麗になったね。ニキビもう全然無いじゃん」
「ありがとう。妹のニキビケアクリーム借りたら治っちゃった」
「そうなんだ。私も使いたいかも。なに使ってるか教えて」
香子にニキビケアクリームの話を続けていると近くに春翔が近づいてくる。香子は私の顔の変化を春翔にも見せたいと思ったのか春翔に話しかけていた。
「見て見て、春翔君。彩芽ニキビ消えてめっちゃ綺麗になったんだよ」
「ちょっと香子!」
香子は私の背中を押して春翔の前に立たせる。こんなふうに立たせられると、自慢するようでかなり恥ずかしかった。
春翔は私の顔をまじまじと見ると照れ臭そうにぽつりと呟く。
「そうか。よかったな」
それだけと思ったが、春翔としては特に興味がないということなんだろうか。香子も同じ感想を抱いたのか春翔からさらに言葉を引き出そうとする。
「もうちょっとないの春翔君。なんかこう、綺麗になったねーとかさ」
「まあ、前よりはいいんじゃない」
適当な感じで言葉を返される。
チャイムの音が鳴る。自分の椅子に座ると先生が教室に入ってきて授業を始めた。授業を聞きながら春翔の言葉を思い出す。春翔から褒め言葉が出ることはなかった。知ってたけどねそんなことは。
心の中に一瞬モヤがかかる。でも、少しは褒めて欲しかったな。
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