1.逃亡者→性奴隷へのジョブチェンジ

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1.逃亡者→性奴隷へのジョブチェンジ

僕、ルベル・カントール。 絶賛大ピンチの最中だ。 「なんで僕がッ、『そっち』になるんだ!」 「えぇい。うるせぇ、わめくなッ!」 檻の中の僕に、外の男が怒鳴り返す。 屈強そうな男。刺青をこれみよがしに見せつけた半裸で、毛根死滅したスキンヘッド。 どこの世紀末の、汚物消毒君だ。 ここは檻の中。 ただの檻じゃないぞ。なんと奴隷専用。 僕は、今から競売に掛られる奴隷なわけだ。 ……さて。事情を説明しよう。 僕は、前世の記憶持ち。 いわゆる異世界転生者、ってやつだ。 記憶が蘇ったのは、今から半年ほど前。 前世は平凡な人生だった。 特に大型トラックに惹かれて死んだ訳ではない。 しかし持ち前の女癖の悪さが災いして、五人の女に一斉に刺されて死亡。 思えば、馬鹿な事をしたよな――七股するなんて。 そんな僕だったから、今世では大人しく生きて大往生してやろうと思った。 幸い、まぁそこそこの家柄の貴族に産まれ落ちる。 しかも次男坊。 暇潰しで磨いた剣の腕と、持ち前の要領の良さ。そこそこの顔の良さで、ここまで乗り越えてきたんだ。 このままのんびりと、どこぞの同レベルの家柄のお嬢さんと結婚して――。 なーんて考えてた。 ……のに、だ!! 突然、兄貴と父親が国家反逆罪で逮捕された。 僕の人生は大きく狂う。 送還途中で二人は逃げ出し、指名手配犯として現在も追われているらしい。 僕や母、妹のミラも結局は逃亡者として屋敷を出る事になった。 全く迷惑な話だよな。 親父も兄貴も何したか知らないけど、これで僕の人生も一気にハードモードだ。 なんて。 ぶつくさ文句垂れてた時に、妹のミラが言った。 『ルベル兄さん。逃亡資金が底をつきそうだわ。でも私に任せて頂戴ね!』 えらく頼もしい妹じゃないか。僕と3つ違いの、十六歳になる妹。 なーんて浮かれてた自分を、ぶん殴ってやりたい。 なんと鬼畜な妹。 僕を奴隷商人に売りやがった! 一服盛られて、後の祭りだ。 そして今現在、競りの始まる市場にて。 裏に設置された檻の中に、腰布ひとつのほぼ全裸状態で放り込まれている。 貴族の僕がだぞ? 超とは言わないが、そこそこの家柄の僕がッ! 奴隷……屈辱と怒り、怒鳴り散らさなきゃおさまらないだろう。 「ずぇぇぇぇったい、ヤダっ!!」 「テメー、奴隷の分際で我儘いうなっ!」 スキンヘッドが、檻をガンガン叩いて威嚇する。 同じく檻に入れられた奴らは、ビクッと身体を震わせたが僕は違う。 負けじと中指立てて怒鳴り返す。 「なんで僕がッ、『性奴隷』なんだよ!」 僕が今いるのは『家内奴隷』の檻だ。 手っ取り早く言えば、家の事をなんでもこなす下働きだな。 もはや家電レベルに酷使される。 うちにもいた、複数人な。 ――で。 こっちとしては、ここも不満で『剣闘士奴隷』を希望していたが。 よりにもよって、このスキンヘッド。 僕を性奴隷の檻に入れようとしやがった! 「よく見りゃ、顔だけは女みてーに可愛いしな。しかも処女だろ? そっちの方が売れるんだよ」 「しょ、処女って、当たり前だろ! 僕は男だッ」 「馬鹿か、テメー。男娼もいるだろ。ほれ」 男が指さした檻には、確かに女に紛れるように男もいる。 なんかナヨナヨしてオカマみたいな。 「ハァァァッ!? 僕にアレになれと」 「だから我儘言うなっての。開けるぞ、来い」 「いーやーだッ! ぜぇぇぇったい、ヤダ!」 「奴隷の分際でっ、もっと神妙にしろ!」 「うっさいわッ、ハーゲッ」 「ンだとォォォッ!」 檻を開けて僕をつまみ出そうとする男と、檻を必死で掴んで開けさせない僕。 ギャーギャー騒ぐ。周りがドン引きしても構うもんか。 「何騒いでる」 「あ、ボス!」 表の競売場から、不機嫌な顔で出てきた男。 しかも背が低く、小太りのおっさんだ。 こいつが奴隷商人らしい。 汚物消毒君も実は雇われで、このチビデブなおっさんが雇い主。 気持ちわりぃテカテカな笑みを浮かべて、僕の顔を見ている。 「こいつ、何とかしてくださいよ! 檻を変わるのを嫌がって」 「ほほ~。キミは性奴隷がイヤだと?」 「嫌に決まってんだろうがッ!」 叫び、檻の隙間から伸ばされた手を叩き落とす。 「こらっ、この野郎! ボスに何を」 「ぐふふ、良いんだ良いんだ。跳ねっ返りも、客のウケに繋がるからね~……でも」 ギラリ、と男の目が光る。 ……やばい。 嫌な予感に身体を引くが、意味はなかった。 「躾はしなくっちゃね~」 「っがァァァッ!?」 男が何事か口の中で呟いた瞬間、僕の身体に電流が。 苦痛で、へたり込む僕に男は勝ち誇ったこえで言う。 「キミは奴隷、ワタシはボスだよ~。そこんとこ、ちゃんと覚えないとね~? か・ら・だ・で」 「は、ハァァァッ!?」 僕の頬を、芋虫みたいな太い指が撫でる。 キッ、と睨み上げてまた叩いてやりたいが。 先程の電流が堪えて、動けない。 ……奴隷には、漏れなく首輪が嵌められている。 それは魔道具の一つで、主人や主人が設定する人物が自由に罰を与えることが出来るのだ。 つまりこの首輪で、僕はこのゲス共の言いなりってワケで。 「まずは~、その身体を適度に開発しちゃおうか~」 「ちょ、ボス……あんまり商品価値を下げる事はしねぇで下さいよ」 「ふひひひ、大丈夫大丈夫」 汚物消毒君が焦ったようにチビデブおやじにいうも、おやじはまたキモい笑みを浮かべている。 「色々とモノは揃ってるからね~。処女でもちゃ~んと気持ちよくなれるよ~?」 「っひ、な、何するつもりだよ……この変態野郎がッ!」 「ぶひひひ~、怖がる姿も可愛いね~」 檻の中でも必死で逃げようとするが、周りの奴隷達が邪魔だ。 むしろ厄介事はごめんとばかりに、押しのけてきやがる。 くそっ、これだから奴隷は。 って、今は僕も奴隷だった。 「ほら。サッサと檻からでなさ~い」 「や、ヤダ!」 「へ~?」 「い゙っ……あ゙あ゙ぁ゙ぁ゙ッ゙!?」 またこれだ。 ビリビリと全身を鋭い電流が流される。 痛みと屈辱に、クラクラしてきた。 「ぅあ゙……ぁ」 「今度は大事なトコロに電気ながしちゃおっかな~?」 「ひっ……や、やめっ」 不能になっちまうじゃないか! ――ガチガチ鳴る歯を、必死で噛み締める。 これでも貴族カントール家の男だ。 ビビってばかりもいられない。 「その顔もいいね~。でも、そろそろ本気で躾るかな」 「!!」 あ、無理。無理です! ビビる、普通にビビるって! 怖過ぎ。 このまま、このゲス男達に嬲られるしかないのか。 ほぼ半泣き状態の僕。 ニヤニヤと気色悪ぃ笑みの男二人。 ……そんな上に大きな影が差した。
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