6.逃亡者とショタ→決闘?

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「前々から、ちょっと引っかかってたんだよなぁ。その態度」 「あー、気のせいじゃないですか? 」 面白くなさそうに顔を顰めるエト。 口元だけの笑みで、目に敵意を宿すケルタ。 そして二人が取り出したのは、杖だ。 ――あれは魔法使いの杖。 人間界にも、魔法を使える者はいる。だから目にしたことはある。 「おいおい。ここでやるのか」 少し慌てたような声の彼を、ケルタは嘲った。 「なんですか、エト様。もしかして、ビビってます?」 「あ゙? お前もう一回言ってみろ」 「ふっ……大人気ないですねぇ」 「うるせーっ、お前のそのナリは見た目だけだろうが!」 いよいよ穏やかな表情を捨てて、牙を剥くような顔になったエト。 対して飄々とした物言いの少年は、肩を竦めて僕の方をチラリと見た。 「嫌だなぁ、オレの秘密をバラさないで下さいよ」 「お前、ルベルもダマしてやがったか。おいッ、コイツはこんな姿だが本来、俺達よりよっぽど年上なんだぜ」 「えっ、うそッ」 思わずベッドの上から声を上げる。 「本当本当。ドワーフで、見た目年齢が異常に若いんだよ」 「ど、ドワーフ?」 ダークエルフじゃなかったのか。 「じゃあ、エトの弟っていうのは」 「こんな弟居てたまるかよッ!」 ――するとあれは全部、嘘。 僕は騙されていたのか。 まぁ、別にそんなことで打ちひしがれるほど、僕は気の良い人間じゃないけどさ。 そんな事より。 「この嘘吐き野郎、魔法さっさと解けぇぇぇッ!!」 渾身の力を込めて叫ぶ。 アホ男二人のバトルなんざ、どーでもいい。 僕はむしろ、混乱に乗じて逃げ出す機会を伺っていた。 「は? 駄目だよ」 「それはダメに決まってんだろ」 ほぼ同時に即答される。 「なんでだよッ!?」 「当たり前でしょ。ルベルはオレ達のエモノなんだから」 「え、え、獲物」 「そりゃあ、勝った方がルベルと××××して××を――」 「そ、それ以上言うな!!!」 とんでもない卑猥な言葉に思わず声を上げる。 ヤバい、こいつ凄くヤバい。 変態だ。 ……うっそりと笑った少年は、まるで年下の表情じゃない。 その瞳と言葉に恐怖を覚えたのは、当然のことで。 そんなやり取りを見かねたのか、エトが横から言葉を挟んできた。 「おいケルタ、ルベルを怖がらせてんじゃねぇよ。だ、だいたい、こういう事は順序を経てだな……」 「お前は、頬染めて何言っとるんだーッ!」 くそぉ、こいつら二人ともぶん殴りたい。 僕はどっちに対しても、ヤラれるつもりはないからな。 大体、なんでここの奴らは人の話を聞かないんだ! バカか、バカなのか!? 「え、エト。お前は、嫌だろ? 僕みたいな男を嫁にするなんて」 一縷(いちる)の望みってやつを託して、話しかける。 すると複雑そうな表情をした彼が、俯いた。 ――よしっ、断れ! 『女の子の方が』とか言って、僕をフッてくれぇぇぇッ!! かつて、こんなにフラれる事を望んだだろうか。 女なら、少々デブでもブスでも好きだ。 女ってだけで基本愛せるし、尊敬もしている。 だからあの性悪妹だって、内心憎みきれないのはそのせいだと思う。 僕の女好きは、それほどまでに一貫しているのだ。 「あぁ、その事なら母さんから話は聞いた。ごめん、ルベル」 よしよしよしッ、このまま断ってしまえ。 んで、さっさと魔王と奥方(助っ人)呼んで来い!! と、内心ガッツポーズ決めた時だった。 「お前なら抱ける、いや。抱きたい。あと好き、かも」 「なんだそりゃァァァァッ!?」 ツッコミも叫んだ。 だって、今のは断る流れだっただろう!? なんでノリみたく、告白しちゃうんだよ! これだから童貞はァァァッ。
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