6.逃亡者とショタ→決闘?

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ワナワナと震える僕をよそに、馬鹿どもは睨み合う。 「先制攻撃、行きますね」 先に動いたのはケルタ。 杖を振り、素早く呪文を唱える。 「!」 爆ぜた火花と、音。 突き出した杖の先から放たれた雷は、真っ直ぐ彼の元に飛び込んだ。 「っぶねぇな!」 咄嗟に身を翻し、飛び退いた先。 エトは悪態を吐く。 その手の杖には既に、紅い光が宿っていた。 「覚悟しろ、この間男ッ」 刹那、火炎が舞う。 渦を巻いて、ケルタを襲った。 「オレ達はね。愛し合っているんですよ」 すぐさま再び呪文を唱える。 蒼い光の(シールド) 獰猛な炎を受け止め、瞬く間に消していく。 「っ、な、なんだよ。このバトルは」 これが魔法を使った闘いか。 人間界だと滅多に見ることはない。 間近で見ると、えらいド迫力。 「っていうか。お前ら、危ないだろうが!」 人のすぐ近くで、ドンパチやりがって。 当然、文句を叫べば。 「大丈夫だよ。ほら、ちゃんと結界張ってあるし」 ケルタが、やけに甘い声と表情で僕を振り返った。 「大事なお嫁さんに、怪我させたくないからね」 「誰がお嫁さんだ、誰がッ!」 ――いい加減、ツッコミも疲れてきた。 だいたい、いつ僕がこいつと愛し合ったんだ!? エトも間男はやめろ、まるで夫婦みたいだろうが。 なんて言っても。 あのイカれた男たちの耳にはには、届くまい。 ……今もジリジリと距離と隙を伺って、杖構えている。 「諦めの悪い男はモテませんよ。エト様」 「うっせぇ、チビ! お前こそ、下手な嘘吐いてんじゃねぇよ」 「まぁ少し盛りましたけど。だいたい合ってるじゃないですか」 「合ってねーよ!?」 「エト様とは兄弟(ように育ちました)し、魔王の(遠い親類の)妾の子ですよ」 「それ、かなり色々端折ってるだろーがよッ!!」 確かに酷い。 つまり。彼の話はほぼ嘘で、本当は従者の一人と言うわけだ。 しかしそのやり取りからして、兄弟のように育ったというのは、あながち間違いじゃないらしい。 「これからここで、彼と初夜を共にするんですから。邪魔しないで下さい」 「しょ、初夜ァァァ!?」 「当たり前でしょ。その後でゆっくりこの城から攫ってやりますよ」 「お前ッ、堂々とレイプ&誘拐を宣言すんじゃない」 「うるさいです。そこで見ます? 見物料取りますけど」 「取るのかよッ」 そんな下らないやり取りをしながらも、半ば殺気に近い空気は蔓延していく。 正に『私の為に争わないで』だ。 これ程嬉しくないシチュエーション無いけどな。 僕は、大きくため息を吐いて視線を逸らす。 その時だった――。 「こんな時間に、騒いでんじゃねーわよッ!!」 怒号、同時に衝撃音。 ……爆音と共に、一人の人影が部屋に乱入してきた。
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