7.決闘→剣の稽古

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7.決闘→剣の稽古

「ったく、こんな時間に何騒いでんのさ」 女は怒り、男達は項垂れる。 ……乱入者は女で、瞬く間にあの場を制圧してしまった。 「も、申し訳ありません」 褐色少年、ことケルタはうつむいて呟く。 こいつがこんな反応するなら、余程強い立場の女性なんだろう。 「エト、あんたはどうなの?」 「すんません」 状況はなんともマヌケである。 僕も含めた3人の男たちが、1人の女性の前にひれ伏すように座っているのだから。 そう、土下座。 前世ではよく見た、伝統的な謝罪スタイルだ。 ――てか、なんで僕までさせられてるんだ。 面白くない。 「だいたい、何やってたのよ? あ、3P?」 なんて、ふざけた彼女の質問に。 男二人が視線を泳がせつつ、答える。 「近いですね。ねぇ、エト」 「あぁ、そうだな。ほぼ正解」 「ンなわけあるかァァァァッ!」 凄く誤解されるから! 女の子にホモ扱いされるほど、屈辱はない。 そう大声で訂正に入った僕に、彼女は生暖かい笑みを浮かべた。 「いーのいーの。アタシだって兄貴とその従者のプライベートという名の変態行為に、首を突っ込む気さらさらないから」 「だから違うのにぃぃぃ」 脱力してガックリ肩を落とす。 なんなんだ、この世界。ホモとその理解者ばかり。くそっ、負けてたまるかッ! 気を取り直して、顔を上げて彼女を観察する。 ……ポニーテールにした長い黒髪は、豊かで艶やかだ。 濃いめのアイメイク。 整った顔によく似合っていた。 さらに(ルージュ)は変わった色で、緑色。 極めつけは、耳に沢山開いたピアス穴。 それぞれに銀に輝く、リングがついている。 そしてスタイルは、というと。 背は女性にしては高い。 加えて、程よく筋肉のついた身体。 長い足を、時折組み変えてベッドに座っていた。 なんていうか――超ド派手な闘いの女神(アテナ)って感じ。 とにかくインパクトがすごい。 「えっとォ。ルベル君、だっけ」 『アテナ』が喋った。 僕は無言で頷く。 「アタシはルパ。よろしくね! 末っ子長女よ」 「あ、どうも」 彼女は、どうやらエトの妹らしい。 緑色の唇を、ぺろりと舐めて言う。 「母さんから聞いてるよ、ウチの嫁になるんだって? アハハ、イカれてるわねェ」 「それも違う」 嫁にならないし、イカれてるのはコイツらだ。 それなのに、彼女はヘラヘラと笑いながら。 「大丈夫大丈夫。うちの兄貴たち『顔だけは』良いからね。アッチの方は……うーん。エトは童貞だからなァ」 「どどどど、童貞ちゃうわッ!」 「アハハー、動揺しすぎ」 ルパは耳のピアスを弾く。 「まぁ誰でも良いんだけど……いっその事、アタシにしちゃう?」 「喜んで」 「ちょ、ルベル! そりゃないだろ!?」 即答した僕に、エトが声を上げる。 「当たり前だろうが……僕は女の子が好きなんだよ」 「駄目だってば! ルベルは俺のだ」 「エト様、何言ってんですか。彼はオレのです」 「ケルタは黙ってろよ!」 またギャーギャー喧嘩を始めたバカ男達。 呆れ果てた僕を見て、ルパは数秒呆気に取られていたが。 「ギャハハハっ、めっちゃ面白いんだけどーッ!」 と、ギャルみたく手を叩いて大爆笑し始める。 ……この後。 ガチギレした、ダークエルフの執事が飛び込んで来て、さらにカオスになった。
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