7.決闘→剣の稽古

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※※ 昼もかなり過ぎた時刻。 僕は城の中を探索ついでに見つけた、書物庫に篭っていた。 ――さすが魔界だ。 見たことのない書籍が沢山ある。 しかも多くが、古い羊皮紙に書かれた物だ。 状態は良く、内容は興味深い。 魔法書から魔界の歴史書。 魔獣についての、挿絵付きの物まである。 「んん?」 本棚から飛び出た紙。 紙というより、手紙か。 こっちは粗末な素材だ。 「なんだ、これ」 本棚に挟まった手紙。 封筒はなく、ただ一枚だけのだ。 引っ張り出して、表面に書かれた文字を目で追おうとした時。 「何してんだよ。そこで」 人の声。 慌てて振り返ると同時に、手紙をポケットにねじ込んだ。 「エト」 ドアの開く音などしなかった。 でもいつの間にか、入口に立っていたのだ。 「面白い物、あるか?」 のんびりと言って、こちらに歩み寄ってくる。 ――なんだか、酷くヤマシイ事をしているような。 そんな気分を吹き飛ばすように、小さく咳払いする。 「まぁ、どれも興味深いな。人間界には、到底お目にかかれない。一冊、部屋に持って行っても構わないだろうか?」 「あー。良いんじゃねぇかな。でもよぉ、小難しいモノばっかだぜ」 彼は、つまらなさそうに言う。 どうやら読書は苦手らしい。 「そこが良いんだよ。君の知能レベルに合うかは分からんがな」 「あはは、そーなんだよぁ」 明らかに嫌味を言ったのに、おおらかに返されて拍子抜けする。 そして彼は、ニコニコと僕の隣に来て話しかけてきた。 「今さ、家庭教師のマギスから逃げて来たんだぜ。だってアイツ、すげぇ厳しいんだもん」 「座学か」 「そう。古代オーガ語なんて、もう訳わかんねぇよ」 「ふーん」 魔界には、たくさんの魔物がいる。 それぞれの文化や風習も、学んで置く事が必要な立場なのだろう。 「面白そうだな」 「ゲッ! ルベルってば、マジで言ってんのか!?」 彼はまるで、好き嫌いが激しい子供みたいな顔をした。 さては、勉強がかなり苦手か。 「君は、見た目通りだな」 「どういう意味だよ」 「おっ。さすがに嫌味が通じたか」 「ひでぇな、おい」 情けない顔をしているが、怒ってはいない。 こうして見ると、彼は僕より幾つか下に見える。 どこか、こう。純粋に見えるんだ。
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