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8.稽古→湯けむり注意報(※R18?)
「君ん家、やっぱり城なんだなぁ」
そう呟けば。
「はぁ? なにブツブツ言ってんだよ、さっさと脱いで行こうぜ」
なんて。
なんだか妙な敗北感。
僕は浴室を覗き、脱衣場とされる場所へ戻ってため息をつく。
……風呂。人間界のそれとは、事情が大きく異なっていた。
多くは自身の邸宅に浴場を持たず、公衆浴場へ通う。
まぁ前世で言うところの、西洋版銭湯だ。
貴族や王族は邸宅や、城内に浴室を持っているが。
かく言う僕も、公衆浴場の利用は数える程だ。
これでも貴族だったからな。
「広すぎだろ。公衆浴場かよ」
そう、広いのだ。
人間界では、湯の調達もそこまで容易じゃない。
だから浴室も浴槽も、一人用の小さい物が一般的。
公衆浴場となればそりゃあ広いけど。
その分、多くの人が決まった時間に入浴しに訪れる。
行ってみて思ったが、これがなかなかアンダーグラウンド的な世界でさ。
売春や喧嘩等がよく見られる。
最初。好奇心を通り越して、卒倒しかけたものだ。
一つ良いことは、混浴って事かな。
女の子の裸体が見放題なのは魅力……って話が逸れた。
「え、普通じゃね?」
「人間界の皆様に謝れ、この魔界の坊ちゃん野郎が」
広大な広さ。
潤沢な湯。
まるで花のような香りの、湯けむり。
……床は大理石か? 妙に凝ったデザインが、そこらかしこに散りばめられている。
「なにモタモタしてんだ、ルベル。脱げって!」
「うわッ、さ、触んなよ」
既に全裸になったエトが、強引に服を脱がしてこようとする。
なんて言うか、すごい身体。
思わず、見入ってしまう。
同じ年頃とは思えない、体格。
まぁ確かに僕は、少しばかり筋肉の付きにくい体質らしい。
それでも。彼のような肉体は、そうそうお目にかかれないだろう。
彫刻で見たことある、発達した筋肉。
胸筋、腹筋。あと。
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