隣の芝生

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フリーズした君がパッと手を開く。ドアノブを握っていた手が離れ、ドアが閉まる。 君の他人行儀な「お邪魔しました」とともに僕の思考回路がやっと体へと指示を出した。 弾かれたように駆け出し、ドアを開けて叫ぶように君の名前を呼んだ。 キョトンとした顔で君が振り返るものだから、僕の方が戸惑って何を伝えていいのか分からなくなる。 「ち、ちがうんだ!これは…」 「あの、ホントに!何にもなかったですから!」 「んん?えーっと…、」 とにかく誤解を解きたいのだけれど、口から出た言葉は浮気者の言い訳みたいなもので、違う違う!そうじゃなくて!! どう伝えていいのか分からずパニックな僕の後ろからヒョコリ顔を出した彼女がよかれと思って援護射撃をしてくれた。 だけれど今は2人にして欲しい…!いや、文句を言える立場ではないと分かっているのだけれど、貴女が来るとややこしいのだ。 落ち着くまでお待ちいただければ助かるのだけれどこれは切実に。 僕らの勢いに顔だけ振り返っていた君は困ったような顔をして、体ごとこちらへ向いて。 「言い訳とか弁解とか、結構です。めんどくさい。」 じゃあサヨナラ、とフワリといっそ優雅に振り返った君は今度こそ振り向く事なく帰っていった。 あれ。君ってそんなにバッサリな人だったかな?君はどっちかと言うと穏やかで物腰柔らかなフンワリした人では? いや、僕がそうさせてしまったのだ。優しい君につけ込んで、我慢ばかりさせた僕に、いくら優しい君だってついに怒ってしまっても無理はない。 極め付けはこんな状況だ。それはそうだよな…。 ・
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