70人が本棚に入れています
本棚に追加
「星空の写真って素敵ですよね。私結構好きで、ほら」
夏織は自分のスマートフォンの画面を夏彦に見せる。それは、天の川と流れ星の写真だった。夏織はたまたま見つけたこの写真を気に入って、待ち受け画面にしていた。
「それ、もしかしたら俺が撮ったやつかも」
夏彦は顔を綻ばせて、自分のスマートフォンを見せる。それは夏織が見せたものと全く同じ写真だった。
「これ、一番のお気に入りなんだ。嬉しいな」
夏織は夏彦が写真を撮るところを見てみたいと言った。夏彦は少し困ったような顔で「この辺でも撮れるかなあ」と零し、耳の後ろを掻いた。それからふたりは一次会の終了とともに合コンをこっそりと抜け出した。
都会のビルの明かりは幾千もの星を隠してしまう。夏彦はその明かりが少ないほうへと進んでいく。背中には撮影機材が入っているのか、大きなリュックサックが背負われていた。夏彦は撮影場所を探してきょろきょろとしながら歩いていたが、夏織のほうを振り返ることはない。夏織は唇を尖らせながら、その後ろ姿を追いかけた。
ようやく足を止めたのは、広くて静かな公園だった。夏彦は無言でリュックサックから三脚を取り出し、セッティングを始める。居酒屋で見せた笑顔とは全く異なる、真剣な表情だった。夏織はそれを少し離れた位置から眺めていた。
最初のコメントを投稿しよう!