自分の一番の理解者は自分

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 枯葉が一枚、目の前に浮かんでいる。消炭色をしていて、ゆらゆらと波紋をえがいていた。僕が一歩踏み出せば、その枯葉を拾うことができる距離にあった。  ――拾ってどうするのか。  どこからか声が聞こえた。はっきりと鼓膜を通り、脳へ響き、僕のもとに届いた。  ――たかが葉っぱ一枚、しかも枯れている。そんなものを拾って何になる。一歩踏み出す価値は、その枯葉にあるのか。  たぶん、ないと思う。いや、違う。価値がないのではなく、一歩踏み出す勇気がないのだ。もしこの先が深ければ僕は沈んでしまう。そうではないのかもしれない。  けれど、それなら、べつに、わざわざ、拾わなくていいと思う。  枯葉は静かに沈んでいった。  風が、額に滲んでいた脂汗をたたいていくかのようにすぎていった。その風に乗って、赤、青、黄、緑などの色あせた枯葉が飛んでくる。  枯葉たちは、竜巻が起こっているみたいに複雑に絡み合い、形を成していった。どこか人のような形をしていて、この濁った世界をさらに暗くしているように思えて、不気味だった。
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