20人が本棚に入れています
本棚に追加
――おっと手が滑ってしまった。しかしよかったな、深くなくて。わかっているぞ、お前の言いたいことは。なにせ私はお前で、お前は私なのだから。どうせ嘘つき呼ばわりするのだろう。だが少し考えてほしい。私はお前でお前は私だ。ということは私が嘘つきならば、お前も嘘つきだろう。嘘つきに嘘つきと言ったところで変わらない。いや、もしかしたら嘘つきに言った嘘つきは嘘なのかもしれない。人を嘘つき呼ばわりする嘘つきは大嘘つきなのかもしれないな。
物体が僕の身体を覆うようにへばりついてくる。
――なぁ、大嘘つき。身に覚えはないか? 自分で自分に嘘をついたことが。あるはずだ、いいや、ないとは言わせない。なんたって私はお前で、お前は私なのだから。私は何でも知っている。
へばりつく面積は次第に大きくなり、僕の身体の半分以上が枯葉で覆われてしまう。
――あの日、お前は逃げた。必死になって、頑張っていたのに、すこし思い通りにいかなかったり、他人よりできなかったりしただけで、お前は投げ出した。あの日を私は忘れない。お前だって覚えているはずだ。
首から下がすべて枯葉に覆われてしまう。指一本動かすことができないほど、隙間なく張り付いている。
――あの浮いている枯葉は、かつてお前が投げ出したものだ。もとは青葉で強く、鮮明に輝いていた。しかし、お前のせいで枯れてしまった。しかもさっきお前が拾わなかったせいで、もっとボロボロになってしまった。お前にとってその程度のものだったのか? 本当に投げ出してよかったのか?
さらに枯葉の力が強くなり、全身が締め付けられ、息ができなくなる。
――私はお前でお前は私だ。しかし私はお前と違って、投げ出したくはなかった。なのに、お前は投げ出した。私はそれがたまらなく……。
一瞬、身体を覆っていた枯葉の力が弱くなる。
最初のコメントを投稿しよう!