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――悔しい……。そうか、私は、悔しいんだ。
首元からぽろぽろと枯葉が剥がれ落ちていった。
――とても悔しい。たまらなく悔しい。本当に悔しい。死ぬほど悔しい。悔しい、悔しい、悔しい。
そうだ、僕は、悔しいんだ。
肩、腹、腰と順番にはがれ落ちていく枯葉は、濁った水の上に積み重なっていった。だから僕は、いまにも沈みそうな消炭色の枯葉に手を伸ばした。
盛大に水しぶきを上げたせいで、枯葉を見失う。僕は膝をついて必死に探した。濁った水が目に、口に入る。吐き気を覚えても、それでも構わず探した。
なぜ気づかなかったのか。僕は悔しかったんだ。僕よりも上手で、みんなから認められて、輝いていて、かっこよくて、僕もああなりたいって思っていた。全部悔しいってことだったんだ。
ふと、枯葉が一歩踏み出したところにあるような気がした。おそらくここよりも深い。そこにあるという確証もない。でも、行かなきゃいけない気がした。行かなければ後悔するような気がした。
再び背中を押された。何に、いや、誰に押されたか分かっている。だから僕はその勢いで、水の中に飛び込んだ。
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