頼りにならない四将軍

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「じゃあ、ヴァディス爺ちゃんにするか」    魔界四将軍のもう一人。  ヴァディスは年を食っているだけあって、いろいろな物事に詳しい。  きっと、魔王が何をすればいいかくらい、知っているだろう。  ただ、それなのに、四将軍の中で最初に訪れなかった理由は当然あるのだが── 「ヴァディス爺ちゃん?」    そっと部屋を覗くと、その部屋は魔法により目一杯拡張されて、大勢で大宴会が催されていた。  やっぱり。  俺はただそう思う。    ヴァディス爺ちゃんは、何かにあるにつけ、人を集めて酒を飲むのだ。  今回は魔王の追悼とかが建前なのだろう。  酒が好きなくせに酒癖は悪いから、酔っているときのヴァディス爺ちゃんには近寄らないことにしている。  宴会に参加している魔人たちに見つからないうちに、そっと扉を閉める。 「困った。四将軍全滅か」    もちろん四将軍以外にも、魔王城には人はたくさんいるのだが、俺が親しく、なおかつ魔王のしきたりなども知っていそうな魔人といえば、かなり限られている。  頭を悩ませていると、 「全滅じゃないやい! アタイを忘れるな!」  頭上から小柄な少女が飛び降りてきた。   「ミシェル……」 「ずっと見てたら、他の三人のところには行って、アタイを頼りにしないってのはどういうことだい!」  俺はその少女、四将軍の最後の一人の名を呟いた。  彼女は、他の三人とは違い普段から常軌を逸しているから、なるべく近寄らないようにしていた。 「いつから見てたんだ?」 「ソーンが朝ごはんを食べ終わったときからだから……三時間くらいかなあ」  ほら。 「新米魔王が何をすればいいか、だろ? それくらいアタイにも分かるぜ。まず、冠だろ、で、自分の使い魔を召喚しなきゃ」  戴冠の儀と、召喚の儀。  そんなことを、たしかに魔王学でも習った気がする。  俺は納得すると同時に、ミシェルからまともな意見が出てきたことに首を傾げた。   「その顔は、なんで知ってるの? って顔だな。ソーンこそ、知ってるか? アタイは前代魔王が戴冠したときすでに四将軍だったんだぜ?」  そうだった。  この見かけと行動の幼さに騙されるが、ミシェルは四桁になろうかという年齢である。  もともと魔人は種族によって寿命が大きく違うのだが、ミシェルはその中でも長命なのだ。  さすが魔界四将軍の一人と言ったところだろう。 「ところで、もう一個聞きたいことがあるんだ」 「何だい? アタイはたいていのことは知ってるよ?」 「朝から俺につきまとっててお前の仕事はどうしたんだ?」 「さぁて、アタイは昼食を食べに行こうかな!」  さすがの俊敏さを発揮して、ミシェルは大食堂へ逃げていった。
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