一緒に寝ようか。

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一緒に寝ようか。

【side キヨ】  それは、修学旅行の時の話。  2泊3日の、最後の夜。  4人部屋、とっとと寝てしまった同室の奴らの寝息を聞きながら、俺は眠れずに寝返りを打っていた。  ソファベッドで、寝にくかったというのも、ある。  それ以上に、アイツの温もりが遠くて、物足りなく感じていた。  1日目の布団を並べた旅館では、あんなに近くにいたのに。  こんなに近くにいるのに、傍にいられない。  こんな考えを持つこと自体、おかしいのはわかってる。  けれど、一度求め始めたら手に入れるまで落ち着かなくて、俺は悶々と寝返りを打ち続けていた。  その時。 「眠れない?」  遠いベッドから、小さな声。  聞き間違いかもしれない。 「……キヨ?」  もう一度、確かに届いた、俺の名前を呼ぶ声に、ゆっくりと体を起こす。  やけに響く衣擦れの音が、俺をドキドキさせる。 「お前も、眠れないのか?」 「ん……」  はっきりしない声。  暗闇の中では目を凝らしてもはっきりと見えないが、多分困っているのだろうと思う。  なんとなく眉を下げた表情が見えたような気がして、俺は笑みを刻んでしまった。 「一緒に寝ようか」 「……いいよ」  許可を得て、俺はソファベッドから降りる。  近付くと、ベッドの端ギリギリまで寄ったタカが、すっぽりと布団に丸まって小さくなっていた。  顔を見られないように、わざと隠して。  ソレが妙におかしくて、何故か可愛く思えて、俺は遠慮なく布団を剥がすとベッドにもぐりこんだ。 「やっぱ、狭い」 「なら、こうすればいいだろ」  照れを隠すように上がる不満に笑って、俺は一回り以上小柄な体を抱き締める。  互いの呼吸を塞がないように抱き締めたら、タカの前髪が顎の辺りを掠めて、なんだかくすぐったく感じて身じろぐ。  唇に、タカの額が当たって、驚いて隙間を空けた。  けれど、タカからは何の抵抗も無い。  結局、作った隙間はすぐにふさがってしまった。  昨日は、ふざけて色んなアブナイことをしていたのに、と思うと、この緊張感に笑いと戸惑いが沸き上がる。  けれど、それを口に出して語り合うには、眠気も疲労もピークに達していた。  そして、口に出して起こるであろう変化を、無意識に避けていたんだと思う。  おそらく、タカも。  だから、俺は。 「……おやすみ」 「おやすみ」  ドキドキと安堵。  矛盾する二つを胸の内に秘めたまま、ただ挨拶だけを舌に乗せて、眠りについた。
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