2 前原心海が、ぼくの配信を……見ていた。

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あわてて自分の口を塞ぐ。 小さな画面の中には、昨日やったゲームと夜箕かけるがいた。 心海が後ろを向いた。片側だけイヤホンを外す。 「志堂くん、お疲れ」 「あ、おつかれ」 心海は気づいていない。が、自分は心海をガン見していたので、ちょっと後ろめたい。慌てて目を逸らす。 心海を手招きした女子が、心海の腕をつんつんとつついた。 心海がにっこり笑う。もう片方のイヤホンも外す。 女の子同士の話がはじまる。 「それ、昨日、私、ライブ配信で見たやつ。夜箕かける、心海も見てるの?」 「まじ? わたしも途中まで見てたんだ! でも寝落ちしたー。この人いいよね。声好き。ずっと聞いてたい」 「わかる。イケボ。作業用BGMにしてる」 目の前の空気がきらきらした。 にっこり笑う心海の横顔が、まぶしい。胸の奥がこそばゆい。むずむずする。嬉しくてたまらなかった。 * 授業終わり。心海に話しかけられた。 「志堂くん、ゼミの時間変更になったって聞いた?」 「あ、うん」 気づかれるかも。 妙にどきどきした。 自意識過剰とわかっていた。 今まで普通に話していても気付かれなかった。確率は低い。 でも、正体がばれるかもしれないと思った途端、受け答えがぎこちなくなった。 夜箕かけるは、自分だけど、自分じゃない。 ──中の人を知られて、もし、がっかりされたら。 ──だって、心海は、自分ではなく、勇汰を選んだ 今まで思ってもみなかった感情に戸惑う。 太一はきゅっと口を引き結んだ。 心海の視線が、肌のニキビに絡んだ気がした。 太一は踵を返した。 逃げるようにその場を去る。
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