星降る夜に good bye

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1、夜の公園 今日は、19才の誕生日。ベンチの隣は彼氏ではなく残念ながら父だ。 「今回も、きれいな星空だなあ」 腕組みしながら、父は顎を前に突き出している。 「ほんと、東京と全然違う。今年も良く見えるね」  私も、空を見上げながら答えた。  私達は、八月の月遅れのお盆にここを訪れるのが恒例となっている。  ここは、市内を一望に見渡せる小高い丘の公園だ。  春には桜が満開になり、夏には青葉が茂る。  昼間はそこそこ人が訪れるが、夕方からはほとんど居ない。 まして、夜になると暗さと相まって誰もいなくなる。 田舎の空気は澄んでいて、星を見るにはこの上ない。 そよそよと吹く風も、夏の夜には心地良い。 ただ、夏場は蚊がいるので、事前の防御が必要である。 そこには、4人掛けのベンチがあり、そこに座って星空を眺めた。 明るいもの チカチカしているもの 連なっているもの 見渡す限りの星空だ。 まるで、プラネタリウムの中にいる様だ。 町の明かりも幾つか残っているが、ほとんど消えている。 周りは、静寂に包まれ虫の音だけが聞こえている。 二人共、最初の言葉の後は、ずっと黙って夜空を見上げていた。
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