凍れる星の降る森へ

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両手が塞がってしまったから、 胸ポケットに入れたスマホの明かりだけが(たの)みの綱だった。 落ち葉をぐしゃぐしゃ踏みながら、しばらく無心で歩いていると、 さっきのクスリが()いてきたのか、気持ちが少しだけマシになった。 ——背中の依子(よりこ)は静かに重い。 まだそんなに進んでもないのに、額から汗が噴き出してくる。 (いったい自分はどこに向かって、何をするつもりでいるのだろう……) 今さらながらそんな迷いがふつふつ湧いてくるけれど、 ……アパートをあわてて飛び出た時、 とっさに浮かんだ場所の景色が「ここ」だったから、仕方ない。 (ここならきっと、ちょうどいい……) 「なぁ、依子(よりこ)、覚えてるか?」 背中の彼女に聞こえるように、俺は大きめの声で言った。 「昔、ここに遊びに来たろ?」
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