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何となく眠れなくてひっそり階下に降りたら、意外な人物に遭遇した。
「とうさん……」
時刻は恐らく深夜二時を回っている。
そんな中、カーテンも窓も開けた掃き出し窓の傍らに座って、養父が一人で月下独酌を楽しんでいた。
文字通り月光を独り占めするかのように気持ち良さそうに窓辺に座っていた養父は、とうの昔に龍樹の気配に気付いていたのか、龍樹が声を上げても驚くことなく唇に浮かべた笑みを深くする。
その手にはいつも食器棚の一番上の棚に大切に仕舞われている切子細工のお猪口が握られていて、父が特別な独酌を楽しんでいたのだということは一目見ただけで分かった。
「ごめん、邪魔するつもりは……」
空気を察した龍樹は部屋へ戻ろうと素早く足を引く。
だがそれよりも養父が唇を開く方が早かった。
「龍樹」
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