2人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
……龍樹は、ただの子供ではない。
今までただの子供でいられたことはなかったし、きっとこれからもただの子供……引いてはただの人間にもなれない。
国家の名を背負って、国に不要となった人間を片付ける『掃除人』。
龍樹は小学生でありながら、すでに掃除人という肩書を負っている。
その肩書を負っていなければ、存在することさえ許されない。
自分の年齢が両手の指の数より多くなるより早く、龍樹は『人殺し』の咎を負った。
そんな龍樹を、この家の中で、恐らく養父だけが知っている。
養母や義妹に絶対知られたくないと思っている、龍樹の大きな秘密を。
「……ただの子供でいて、いいんだからな」
その事実を不意に突き付けられたような気がして、体を強張らせたまま顔を伏せる。
だがそんな龍樹の頭上に降ってきたのは、柔らかな言葉と温かく大きな手のひらだった。
「この家にいる間は、お前も普通の子供でいて、いいんだからな」
最初のコメントを投稿しよう!