2人が本棚に入れています
本棚に追加
囁くようにそう呟いた養父は、まるでその言葉を龍樹の頭に刷り込むかのようにワシャワシャと容赦なく龍樹の頭を撫で回す。
「わっ!? 父さんっ!?」
「さーて、明日も仕事だ。いい加減寝るか」
「えっ!?」
「何だ? 寝れねぇなら一緒に寝るか?」
「はぁっ!?」
一瞬『自分がここに来たから養父は晩酌を切り上げてしまったのだろうか』と思ったが、ニヤリと厭らしく笑う養父を見たらそんな神妙な心持ちはどこかへ吹っ飛んでしまった。
思わず素っ頓狂な声とともに顔を跳ね上げれば、ニヤニヤと笑った養父はわざとらしく『シーッ』とひそめた声を上げてみせる。
「母さんと綾が起きちまうぞ。二人に夜更かしを怒られたくはねぇだろ?」
その言葉に思わずウグッと言葉を詰まらせると、養父は心底楽しそうに笑ってみせた。
そんな養父に何とか一矢報いたいのに、よく回るはずである龍樹の舌は肝心な時に動かない。
最初のコメントを投稿しよう!