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「……」
「あのぉ、聖女様……もうそろそろ、執務に取り掛かってくれませんか?」
「……」
調度、命都が始末書で頭を悩ませている中、聖女、セイラの執務室では木下がセイラの執務をしなさように困り果てていた。
(どうしましょうか? 一応、聖女様の管理は局長が管理していますし、僕にも仕事があるんですけどぉ……綿摘さんから『執務するまで監視しとけ』と言われちゃいましたし。本当にどうしましょうかぁ?)
木下はうんうん、と困っていながらも目の前の状況を見る。
セイラは先ほどから端末に目を通してはいるが興味無さそうに、適当に端末を弄っているように見えた。
まるで子供が嫌な宿題を無理やりをやらされているような気分であった。
なんで、木下も無理やり、という事は出来なかった。
理由は二つ、一つ目はセイラが木下よりも上の階級という事、もう一つはセイラに無理にやらせては彼女の成長の妨げになるのではないかと思いが彼が無理やりセイラに対して執務をさせる様なことができなかった。
だが、セイラが執務をしなければ木下自身が仕事に戻れないという悪循環が発生している。
「あ、あの~、聖女様」
「…………」
木下が何と言おうともセイラは何一つ返答をせず反応する素振りさえも見せない。
「聖女様?」
「…………」
再び声をかけてみるが反応は無い。
そして何度も、木下はセイラに声をかけてみるが、セイラは何一つ反応を見せようとしない。ましてや返そうともしてこない。
(気まずい)
その状況は下っ端職員の木下にとって厳しい物であり、胃に穴が開きそうなものでもあった。
(あぁ、誰か助けてください)
虎と狼の板挟み、とうまくいったものかもしれない。
今の木下はどちらに取ったにせよ改善策が無ければ胃に穴が開いてしまうものであったのだから。
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