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時が過ぎ、命都が始末書をきれいさっぱり始末し終えた時に、日は既に上り詰め、眩しい日差しも聖堂内に差し込んでくる。
そのせいか、聖堂内の豪華な装飾は眩しく反射し、聖堂内を眩しく照らしていた。
「お、やっと来たか綿摘」
「……はい、来ましたが一体、何ですか? このような場所に」
眩しい聖堂内で大きな十字架が釣り下げられている前で木製の椅子に座りながら小さな丸テーブルで優雅にお茶を飲んでいた老齢な神父が座っていた。
「なぁに、ただの老人のつまらない他愛事よ」
「他愛事ですか……あなたがそんなことを言うはずはないように見えますが」
「いやいや、たまには言いたいと思うんだよ」
「そうですか」
老齢の神父はにこにことまるで陽のような笑顔で命都を見ていたが当の本人は嫌そうな顔をしていた。
「うぅむ、いつもそんな顔をしていれば主に迷惑をしてしますよ」
「そうですか。私はそんなこと構わないですよ。それにあなたも知っていますよね。私が宗教嫌い、ということを」
「むぅ、確かに知っているが、それはなぜかね?」
「あなたには既に数十数百、いや既に数千回と言っていますが、宗教に目が狂った人間が嫌いなんですよ。男も女も子も老人も、皆ね! そしてそれを先導した聖人君子含めて私は大が付くほど宗教と言うものが嫌いですよ」
命都はまるで嫌味と愚痴を口を吐くように、老齢の神父に言い放つが当の本人はその言葉に優しく包み込むように彼の言葉を一語一句受け止めていた。
「ふむふむ、そうですかそうですか」
「……あなたが呼び出したのはそれだけではないでしょう?」
「えぇ、まぁ、まずはそこの席に座りなさい」
「…………わかりました」
命都は老齢の神父に言われるがまま、差し出された椅子に座るとまるで命都が来ることが分かっていたかのように彼の前の前には一つの温かい紅茶が入ったティーカップが置かれていた。
「これは?」
「なに、安物の茶葉だよ。気にせず飲んでくれたまえ」
「…………そうですか」
お茶に詳しくない命都は出された紅茶の匂いだけで、これは高いものだという事を理解できていた。
そのようなものを老齢の神父は安い茶葉と言い、命都の前に出すのだからそれほどの自信があるのか、それともただの大馬鹿ものか、と普通はこうなるのかもしれないが、そうなるとは限らない。
老齢の神父が命都の前にこれ程の茶葉を出したのは、昔ながらの中でありながら今でも交流がある茶飲み仲間であるからだ。当然、これらは老齢の神父からしたらであるが、命都本人はそうとは微塵も思ってはいない。
苦手で嫌いな宗教に純粋に属するものとは、語ることも無く顔を見ることもない。ただ興味の無い存在であったが、命都自身、半ばそうとも言い切れなかった。
カチャン、
小さくカップの音を鳴らしながらもカップを持ち上げそのまま口の方へと持っていく。
「…………」
口の中に広がる紅茶の匂いと味わいは、命都自身も不可解な物を感じさせ、苦く甘いものであった。
「最近はどうかね?」
「最近ですか?」
「あぁ、どうなのかね?」
「どうと言われましても何一つ変わりませんよ」
「いやいや、そうでもないだろう。彼女の事とかね」
「…………セイラの事でしょうか?」
「まぁ、そのようなことでもいいのだがね」
似非神父め、と命都は心の中でそう呟きながら老齢の神父に向けてその鋭い視線を飛ばす。
だが神父はそのような視線さえも優しく躱すかのように、優雅に紅茶を飲み続ける。
「……彼女ならいつも通りですよ」
「そうかそうか、という事は毎日のように宝物庫から物を盗んでいるのかい?」
「はい、そうですよ」
命都はいらいらしながらも老齢の神父の会話をし続け、神父は満足そうな顔で会話をし続ける。
まるで、年寄りの話を嫌い若者が無理やり付き合わされるかのように、ただ話を続ける。命都が沸々と湧き上がる怒りを抑えながら、強くカップを持ち続ける。
「ふむふむ、やはりあの子は変わらないのですね」
「はい? それはどういう事でしょうか?」
「いやいや、こちらの話ですよ」
「……そうですか」
なぜか言い淀む老齢の神父に対して命都は、渋々とカップの中に入っていた紅茶を一気に飲み干した。
「|この似非神父め〈それでは帰らせていただきますね。セバスチャン神父〉」
「えぇ、いつもありがとうございますね」
命都は厭味ったらしく、言いながらその場を去ると、セバスチャン神父は優し笑顔で彼の背中を眺めていた。
「あなたに主の加護を」
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