瞳が見えなくて

2/3
8人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
 なんでも大学生だと言っていたけど、少し違うようだ。  案の定。すぐに小雨が降り出した。  まるで彼と別れてからは、味の抜けたただ黒いだけのコーヒーを客へ渡しているかのような感覚だった。小雨から大降りとなり、客が増えてきた。  どの客も私を気にしない。  どの客にも私は気にしなかった。  ただ、彼の言った。 「最近、キレイになった?」  その言葉が頭から離れなかった。  週明けにまた彼と出会った。  いつも事前に会う約束なんかしないのに、彼とは良いタイミングで出会うのだ。  初めて彼と出会った駅だった。  そこは私の通う専門学校から気晴らしに行く公園のある駅だ。  お気に入りの公園は、いつもマークしている。  人が少なく。  開放的で桜の木が植えてあり、春が好きな私の特にお気に入りは、桜の花弁が多く落ちるところ。 そして、お弁当の買いやすい、近くにコンビニがある公園だ。  彼は私の顔をその日は、あまり見なかったし、私も俯いていた。  桜の木々から花弁が降りだした。 「今度、海外のマーシャルアーツの国際試合にでるんだ」  そう、彼の大学はあらゆる武道で有名な大学だった。   「いつ頃。戻るの?」 「三年は向こうにいる」 「いってらっしゃい。待ってるから」
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!