怪事件

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怪事件

この静かな町で怪事件が起こった。 バラバラ殺人だ。 手足だけが切断されていた。鋭利(えいり)な刃物ではなく、動物にでも食いちぎられたような(あと)だ。死因は失血死(しっけつし)と警察は断定した。  場所は住宅街からは目と鼻の先だが、森林が生い(しげ)っていて、未開発地帯に一棟だけポツンとそびえている。 地下一階地上三階建ての廃墟になった病院だ。一階は受付と診療科の跡がある。二階と三階は手術室と病室が並んでいる。地下はあまりいかないので、どうなっているか不明だ。三階の元病室が僕らのたまり場所だ。昼間に訪れるので、内部にはかなり詳しくなっていた。 第一発見者は親友の熊坂多久(くまさかたく)だ。何階での惨事(さんじ)かは警察発表にはない。  暑い秋が終わり、急に寒くなった。二学期も数週間しかない。大学受験を控えている僕らには、大変ショッキングな出来事だ。 「野村!」 「は、はい……」 野村差機緒(のむらさきお)これが、僕の名前だ。 「野村、ぼんやりしていると、大学に落ちるぞ!」 白崎(しらさき)高校の担任の山野(やまの)が言った。身長が低いので、教壇(きょうだん)身体(からだ)の半分は隠れている。 受験生なのだから、勉強に(はげ)まないといけない時期なのに、僕までも熊坂の心配をして、勉強に身が入らない。 事件は警察もさっぱりわからないらしく、熊坂も死体を見てから、元気がないのだ。  
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