12人が本棚に入れています
本棚に追加
/52ページ
怪事件
この静かな町で怪事件が起こった。
バラバラ殺人だ。
手足だけが切断されていた。鋭利な刃物ではなく、動物にでも食いちぎられたような痕だ。死因は失血死と警察は断定した。
場所は住宅街からは目と鼻の先だが、森林が生い茂っていて、未開発地帯に一棟だけポツンとそびえている。
地下一階地上三階建ての廃墟になった病院だ。一階は受付と診療科の跡がある。二階と三階は手術室と病室が並んでいる。地下はあまりいかないので、どうなっているか不明だ。三階の元病室が僕らのたまり場所だ。昼間に訪れるので、内部にはかなり詳しくなっていた。
第一発見者は親友の熊坂多久だ。何階での惨事かは警察発表にはない。
暑い秋が終わり、急に寒くなった。二学期も数週間しかない。大学受験を控えている僕らには、大変ショッキングな出来事だ。
「野村!」
「は、はい……」
野村差機緒これが、僕の名前だ。
「野村、ぼんやりしていると、大学に落ちるぞ!」
白崎高校の担任の山野が言った。身長が低いので、教壇で身体の半分は隠れている。
受験生なのだから、勉強に励まないといけない時期なのに、僕までも熊坂の心配をして、勉強に身が入らない。
事件は警察もさっぱりわからないらしく、熊坂も死体を見てから、元気がないのだ。
最初のコメントを投稿しよう!