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「結果を出さない人が努力しているのが可笑しい?」
やめろと叫ぶ頭を、口が無視する。
馬鹿にされて傷つく心が、怒りながら泣き叫ぶ。
心を表に出さないように、頭が深呼吸しろと命令してくる。
その命令を、全身が無視した。
バラバラだ。
心と頭と身体が、バラバラになっている。
「努力しているのに結果が出ていないのが可笑しい?」
心が口の背を押す。頭を置いてけぼりにする。
「結果を出さない人に人権はないわけ?」
鈍間な動きで閉じたノートを鞄に仕舞う。パソコンの電源は点いたままだったが、構わず無視する。
どうだっていい。とにかくもう、堀の顔を見たくなかった。
「二度と勝手に見ないで」
フロアを後にする。足早に会社を出た。街の中は金曜日だからか人が多い。
鬱陶しくて、泣きたくなった。
なぜあんなに捲し立ててしまったのか。彼はノートを勝手に見ただけだ。先輩の寛容な心で笑って許してやれば良かっただけなのに。
自分の心を、三十年生きていてもまだ、コントロールできないでいる。
一番惨めなのは、幼いままでいる私の心だ。
歩く両足が速度を上げる。早く家に帰りたかった。
私を待っているカレンダーがある、それ以外何もない、家へ。
惨めで、無様な私を唯一受け入れてくれる、家へ。
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